― 新型コロナウイルス感染症による非常事態からの脱出 ―
新型コロナウイルスのパンデミック感染は世界中で感染者420万人、死亡者28万人に及ぶ多くの犠牲者を出し、経済的には1929年の世界大恐慌の時以上の大打撃を与えるだろうとの予測があります。
ウイルスという目に「見えざる敵」との戦いの中で外出制限、出勤制限、イベントや大規模集会の中止で多くの企業に甚大なる被害が出ています。
国からの支援金は“遅きに失する感”があり明日の経営も困難な企業も多く出てきています。
そのような中で、いま必要なことは自分の生活を見直し“自分の身は自分で守る”という事ではないでしょうか?
「3蜜」の環境を避け手洗いや消毒を徹底して「感染をしない、させない」という努力は当分の間続ける必要はあります。
しかし、80%の行動自粛という事を今後何か月も続けていけるはずはありません。
そうすれば膨大な経済的損失と失業者の増大で取り返しのつかない状態となる事は目に見えています。
WHOの研究者からは新型コロナウイルスはHIVのように完全に死滅することは無いがないだろうと報告されています。
たとえワクチンが数年後に使用されるようになっても世界のどこかで新型コロナウイルスの再燃があると考えて置く必要があります。
ですから長い間コロナウイルスとは共存していく以外にはないでしょう。
私たちに今できること
では、私たちが今どの様なことができるかを考えてみました。
ドイツ語では「Neues Leben」といいますが、「新しい生活様式」に挑戦してみませんか?
まず、個々の人が今後は中長期にわたって今までのような仕事の仕方、働き方、生き方ができなくなると覚悟を決めるのが必要かと思います。
1. 仕事、働き方の変革:
すべての会社や個人事業主は中長期の達成目標を達成するために努力をしています。
しかしそれが達成できないことが明白になる中、例えば2年後に達成目標を立てていた計画を3年とするという風に切り替えることです。
毎日満員電車に何時間も乗り、残業をするのが当たり前というのが常識という我が国の仕事のやり方は見直し、時差出勤、リモートワークを当たり前とすること。
その結果、当初は仕事の効率が落ちるかもしれませんが、長い目で見ればそのほうが仕事の能率も上がり収益も上がってくるはずです。
飲食店であれば、今までのように満席になるまで受け入れていたお客さんの人数を20~30%減らし、テーブルの間隔を空けるなどの工夫をする。
私の個人的な経験からお話ししますと、私が2005年に日本に帰国して日本の大学病院の心臓外科教授に就任した時には、医局員が全員21時過まで勤務をしていました。
私は医局員にできる限り早く帰宅するように促したところ、数か月たったころから徐々に18時になれば帰宅するものが増えてきました。
仕事にメリハリができ手術の件数は倍以上になり、研究論文執筆も増し明らかに仕事の効率が上がったことが証明されました。
家族と過ごす時間も増え家庭も円満になってきたようです。
2. 生活、生き方の変革:
多くの日本人は日曜、祭日も惜しんで仕事に専念されて来られたかと察します。
骨身を削って働くことが美徳であるという日本の文化の中で育ち、成長された方々に南がこのようなお話をしても納得していただけるかどうかわかりません。
大変根本的なことですが人は何のために働くのでしょうか? それは生活していくお金を得るために、家族を作り幸せに生活していけるためにという思いをお持ちの方が大半かと思います。
しかし、中には仕事に成功して大金持ちになりたい、有名人になりたいと思う方もいるでしょう。
どのような意図であれ、休むことを惜しんで仕事に没頭していると大きな落とし穴が潜んでいるという事を忘れてしまいます。
すなわち、長時間労働と精神的ストレスで体内は交感神経優位となりアドレナリン過多で睡眠不足、慢性の疲労が重なり高血圧、不整脈、狭心症といった病気が生じてきます。
それらの症状にも気づかず仕事をしていると、脳溢血、心筋梗塞、大動脈かい離といった、その場で命を落とす大病を患う事となります。
また、人は長年、ストレス状態にいると免疫力が落ち感染症にかかりやすくなりがんにかかる率が高まります。
当然、今回のような新型ウイルス感染症にも罹りやすくなります。
またドイツでのお話になりますが、すべての被雇用者に年間5週間の有給休暇を義務つけています。
しかも、有給休暇を取得していないと厚労省から雇用主に監査や指導が入り、改善されないと労務改善命令が出ます。
以上のごとく、とりわけ今後の日本では仕事にもう少し余裕を持つことができ、ストレスのかからない生活に心がけることで免疫力を落とさないことがこのコロナ危機を乗り越えていく個人にできる出口戦略といえるでしょう。
最後にアップル社を創設したステイーブ・ジョブズ氏が残した名言をご紹介いたします。
「私が勝ち得た富は、私が死ぬ時に一緒に持っていけるものではない。
私が持っていける物は、愛情にあふれた思い出だけだ!」
協力して意識を高めこの困難な時期を共に乗り越えましょう。